2027年4月、技能実習制度は終わる。── 育成就労制度と「外部監査人」をめぐる、監理団体の戦略

「2027年問題」は、すでに始まっている
1993年から続いた技能実習制度は、2027年3月をもって新規受入れの歴史を閉じる。 2027年4月1日、これに代わる育成就労制度が施行される。
この施行日は、2025年9月26日の閣議決定を経て、同年10月1日の官報告示により正式に確定した。改正入管法および育成就労法は2024年6月21日に公布、関係省令・告示は2025年9月30日に出揃っている。「いつ始まるのか」という問いに対する答えは、もはや曖昧ではない。
問題は、外国人材を受け入れる企業、そして既存の監理団体が、残されたわずかな時間で何を準備するかである。本稿では、特に育成就労制度における新しい登場人物として注目される「外部監査人」と、その設置が許可要件とされた「監理支援機関」について、現時点で確定している情報を整理する。
技能実習 → 育成就労、何が決定的に変わるのか
育成就労制度は、技能実習制度を「発展的に解消」する形で新設される。表層的には外国人受入れの枠組みが衣替えしたように見えるが、根幹の哲学そのものが変わっている。
目的の転換
技能実習制度は、建前としては「技能移転による国際貢献」を目的としてきた。これに対し育成就労制度は、最初から「日本の人手不足分野における人材の育成・確保」を目的として掲げる。本音と建前の乖離を、制度の側が解消したと言える。
期間と進路
原則3年間の就労を通じて、特定技能1号水準の人材を育成する。育成就労を修了し、特定技能1号評価試験および日本語試験(A2/N4相当)に合格すれば、特定技能1号への移行が可能となる。試験不合格の場合でも、再受験のために最大1年の在留継続が認められる。
本人の意向による転籍
技能実習で原則認められなかった転籍が、育成就労では分野ごとに定められた1〜2年の制限期間後、本人の意向で可能となる。これは外国人労働者の権利保護の観点から極めて大きな転換である。同時に受入れ機関にとっては、優秀な人材を「囲い込む」のではなく、選ばれる職場であり続けるためのマネジメントが問われることを意味する。
対象分野
受入対象分野は、特定技能の特定産業分野のうち、就労を通じた技能修得が相当と判断されたもの。17分野が想定されている(航空・自動車運送業は当面除外)。
「監理団体」は、自動的には「監理支援機関」になれない
ここからが本稿の中心テーマである。
技能実習制度における「監理団体」は、育成就労制度では「監理支援機関」と名を変える。しかし、これは看板の付け替えではない。
入管庁Q&Aおよび政府資料は明確に、
「技能実習制度の監理団体も、監理支援機関の許可を新たに受けなければ監理支援事業を行うことはできない」
と示している。
許可基準は、技能実習時代より明確に厳格化された。主なものを挙げる。
- 外部監査人の設置(必須・新規義務化)
- 債務超過がないこと(直近決算で債務超過なら、その時点で要件不適合)
- 監理支援を行う受入れ機関が原則2者以上であること(取引先が1社のみの監理団体は許可されない)
- 監理支援事業に従事する常勤の役職員が2人以上であり、かつ受入れ機関数を8で割った数・育成就労外国人数を40で割った数を、いずれも上回ること
- 監理支援機関は、受入れ機関と密接な関係を有する役職員を、当該受入れ機関への業務に関わらせてはならない
2024年2月末時点で、日本全国に監理団体は約3,700団体存在する。このすべてが監理支援機関へ移行できるわけではなく、要件を満たせない団体は事実上の撤退を迫られる設計である。
申請スケジュールは、外国人技能実習機構(OTIT)が監理支援機関の許可申請の受付を進めており、育成就労計画認定申請については2026年9月1日からの受付開始が告知されている。
「外部監査人」という、新しい職能

外部監査人は、育成就労制度において新たに義務化された役割である。技能実習制度では任意設置だったが、育成就労制度では監理支援機関の許可要件のひとつとなった。
入管庁Q&A(Q30)が示す外部監査人の要件は、次のとおりである。
- 養成講習を受講していること
- 弁護士、社会保険労務士、行政書士の有資格者、その他育成就労の知見を有する者であること
- 監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者と、密接な関係を有さないこと
役割は、監理支援機関の役員が監理支援事業の職務を適正に執行しているかを、第三者の立場から監査することにある。技能実習制度時代に頻発した失踪・人権侵害・不正請求といった問題の再発を防ぐため、独立性・中立性を担保する仕組みとして導入された。
外部監査人の氏名は公表される。
形式的な「名義貸し」では務まらず、定期的な実地監査と監理支援機関への指摘・改善要求を継続的に行う実務能力が問われる。
なぜ社会保険労務士が外部監査人に適しているのか

外部監査人の有資格者として弁護士・社労士・行政書士が並列で挙げられているが、それぞれ強みは異なる。
社労士の強みは、外部監査人業務の本質に最も近い領域に専門性があることである。
- 労働関係法令の遵守チェック:賃金、労働時間、休日、安全衛生など、育成就労外国人の処遇が労働基準法・労働安全衛生法等に適合しているかの監査は、社労士の本業そのものである。
- 社会保険の適用関係:健康保険・厚生年金・労災・雇用保険の適用と運用は、外国人雇用において頻繁に問題が発生する論点である。
- 就業規則・雇用契約の整合性:母国語による労働条件の説明・契約締結が求められる中、就業規則と雇用契約の整合性を労務面から検証できる。
- 未払い賃金・ハラスメント・労働災害:これらは育成就労外国人が監理支援機関に相談を持ち込む典型的な論点であり、社労士の日常業務領域と重なる。
行政書士は在留資格・申請手続きに、弁護士は紛争処理・法令解釈にそれぞれ強みがある。一方、育成就労が「労働者として適正に保護されているか」を継続的に監査するという外部監査人本来の機能は、
社労士の専門性と最も親和性が高い。
監理支援機関が、今動かなければならない3つの理由
2027年4月の施行日まで、残された時間は1年弱である。しかし、本当の締め切りはもっと早い。
理由1:許可申請には、数か月単位の準備と審査期間が必要
事業計画書、財産的基礎を証する書類、外部監査人の選任関係書類、相談対応体制の設計など、整備すべき項目は多い。書類を作るだけでなく、要件を満たす体制そのものを構築する時間が必要となる。
理由2:外部監査人は、「探せばすぐ見つかる」職能ではない
要件には養成講習の受講が含まれる。また、監理支援機関と密接な関係を有さない独立性が求められる以上、地縁・業務上の付き合いが薄い専門家を確保する必要がある。さらに、複数の監理支援機関から打診が集中する2026年〜2027年初頭は、適格な外部監査人の需要が一気に高まる。
理由3:受入れ企業からの問い合わせは、もう始まっている
2027年4月以降に育成就労外国人を受け入れたい企業は、どの監理支援機関と契約するかを今から検討している。「許可申請中」の段階で営業活動ができる体制を整えておくか、「まだ申請準備中」のまま顧客を競合に取られるかは、この数か月の動きで決まる。
当事務所が、外部監査人としてお手伝いできること
社会保険労務士法人ユナイテッドグローバルは、京都を拠点とし、多くの労務顧問業務を行ってきた社労士法人である。監理支援機関の外部監査人の業務対応が可能です。
- 労務監査の実務知見をそのまま持ち込む 賃金台帳・労働時間管理・社会保険適用・就業規則の整合性を、現場の日常業務として日々検証してきた経験を、そのまま外部監査業務に活用する。
- 書類監査と実地監査の併用 定期的な実地監査に加え、月次の書類監査を通じて、形式ではなく実態を見る。
- 改善提案までを含む監査 問題点の指摘で終わらず、監理支援機関がどう体制を整えるべきかの具体的な提案までを行う。※独立性の担保のため、実装や実行を行うことはできません。
外部監査人就任については、ご相談を順次お受けしている状況である。2027年4月の施行に向けて、また2026年9月の育成就労計画認定申請受付開始に向けて、早めのご検討をおすすめいたします。
初回相談は無料、オンライン面談にも対応です。外部監査人就任の可否診断、貴機関の現体制と新許可要件のギャップ分析、申請スケジュールのご相談などお気軽にご相談ください。
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執筆者

社会保険労務士法人ユナイテッドグローバル
代表 社会保険労務士 川合 勇次
大手自動車部品メーカーや東証プライム上場食品メーカーで人事・労務部門を経験後、京都府で社会保険労務士法人代表を勤める。企業人事時代は技能実習生(企業単独型、監理団体型両面)の立ち上げ業務に従事し、その経験を活かし多数の外国人採用業務を支援。
単なる労務業務のアウトソースだけでなく、RPAやシステム活用することで、各企業の労務業務の作業工数を下げつつ「漏れなく」「ミスなく」「適法に」できる仕組作りを行い、工数削減で生まれた時間を活用した人材開発、要員計画などの戦略人事などを行う一貫した人事コンサルティングを得意としている。
※本記事はあくまで当職の意見にすぎず、行政機関または司法の見解と異なる場合があり得ます。 また誤記・漏れ・ミス等あり得ますので、改正法、現行法やガイドライン原典に必ず当たるようにお願いいたします。

