ハラスメント相談窓口 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口 内部通報窓口 【法定上の義務である窓口の設置および体制の整備はできていますか?】

法定必須の相談窓口を設置できていますか?

昨今、人材流動性が高りつつあり、副業人材や有期雇用等の働き方も増えてきております。それに伴い、事業主に課せられた法律上の義務も増えてきており、担当者様は対応に苦慮されているものと思われます。

今回は、事業主に課せられた法律上の義務として、設置しなければならない「相談窓口・通報窓口」のご紹介および対応方法のご紹介をしていきます。

設置が義務化されている主な窓口

今回は下記3つに絞って解説をしていきます。 

雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口(パートタイム有期雇用)※パートタイム労働者または有期雇用者を1名でも雇い入れている事業主に対する義務となります。

ハラスメント相談窓口(労働施策総合推進法)※人を雇用するすべての事業主に対する義務となります。

内部通報窓口(公益通報者保護法)※従業員300人を超える事業主に対する義務となります。

上記以外にも「裁量労働時間制」の苦情処理措置における、苦情の申し出窓口の設置等も挙げられますが今回は上記3つに絞って解説していきます。

雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

パートタイム・有期雇用労働法第16条で定められおり、パートタイム・有期雇用労働者を雇用する場合にはパート等の雇用管理の改善等について、パート等からの相談に応じ、適切に対応するための必要な体制(苦情を含めた相談に応じる窓口の体制)を整備することが義務付けられています。

・そもそもパートタイム・有期雇用労働法とは??

パートタイム労働者及び有期雇用労働者の就業の実態を考慮して雇用管理の改善に関する措置を講ずることなどにより、同一企業内における通常の労働者とパートタイム労働者及び有期雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるよう、通常の労働者とパートタイム労働者及び有期雇用労働者との均等・均衡待遇の確保を推進することを目的とした法律です。

・この法律が適用される労働者は下記①②の通りです。

①パートタイム労働者 : 1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者のことを言います。

②有期雇用労働者 : 期間の定めのある労働契約を締結している労働者のことを言います。

※気を付けていただきたいのが「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」といった名称にかかわらず、上記に当てはまる労働者であれば、パートタイム・有期雇用労働法の対象となります。

この法律が適用される労働者を雇用する場合は、雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。

社内のみで体制を整備する場合は人事部門を相談窓口にすることが必要となります。この場合、相談したことを理由として不利益な取扱いを行わないことも明示することで、窓口が適切に機能するようにする工夫等をすることが望ましいと考えられます。

また、相談に応じることのできる窓口等であれば、その名称を問うものではなく、また組織であるか個人であるかは問われないとされておりますそのため、外部の専門家等を窓口とすることも可能なので、社会保険労務士や弁護士等の専門家を窓口に設定することも有効です。

また、相談窓口整備ができましたら、その内容を対象労働者を雇入れる時に配布する文書(労働条件通知書、雇用契約書等)に雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口について明示しなければなりません。違反した場合、明示しなかった対象労働者1人につき、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

また、事業所内のパートタイム・有期雇用労働者が通常目にすることができる場所に設置されている掲示板への掲示等により、 パートタイム・有期雇用労働者に周知することが望まれます


ハラスメント相談窓口

男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法では、人を雇用するすべて事業主に対して職場における下記のハラスメントについて、防止対策を講じることが義務と定めております。

ハラスメントの種類

マタニティハラスメント 育児介護ハラスメント
妊娠、出産等をしたことを理由に、あるいは育児・介護休業等の制度を利用した、または利用しようとしたことを理由に、上司や同僚により就業環境が害されること

セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されること

パワーハラスメント
優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること  

事業主が講じなければならない措置

①事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発する 

②相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備する(相談窓口の設置・体制の構築)

③相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者及び行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずる

④相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発する

⑤業務体制の整備など、職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するために必要な措置を講ずる

上記対応を怠った場合には管轄労働局より助言、指導または勧告を受ける場合があります。また、規定違反への勧告に従わない場合にはその旨を厚生労働省のホームページに公表される可能性もあり、例えば、採用希望者が貴社の名前を検索したときにハラスメント防止措置を怠った企業として見つけてしまうというリスクを抱えることとなります。

①~⑤のすべてをトータルで行う必要があります。また労働者プライバシー等にも配慮した適正な運用が求められているため、実施の際には弁護士や社会保険労務士等の専門家または各都道府県の労働局に設置されている総合労働相談コーナー等活用すると良いかもしれません。

内部通報窓口

2022年6月1日より公益通報者保護法が改正され、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設定、調査、是正措置等)を常時使用する労働者の数が301人以上の事業者に対し義務化されました。恐らくではありますが、この301人以上の枠は将来的になくなり、すべての事業者に対する義務になることと思われます。

公益通報とは企業などの事業者による一定の違法行為を、労働者(パートタイム労働者、派遣労働者や取引先の労働者などのほか、公務員も含まれます)・退職後1年以内の退職者・役員が、不正の目的でなく、組織内の通報窓口、権限を有する行政機関や報道機関などに通報することをいいます。

今回はこのうち「組織内の通報窓口(内部通報窓口)の設置」及び「体制の構築」をすることが求められており、本法の義務を履行しない等の違反があった場合には30万円以下の罰金に課せられる可能性があります。

組織内の通報窓口(内部通報窓口)の設置主に下記①②が考えられます。(※①②の複合という形式をとっているケースもあります。)

①社内で体制を構築する。

社内で体制を構築する場合には「従事者」の選任及び教育が重要となってきます。

従事者とは、内部通報の受付・調査・是正を主体的に行い、 通報者を特定させる事項を伝達される者をいいます。

部門名等の指定では本法の「従事者」としては認められません。従事者は公益通報の担当として個人名を指定する必要があります。法務部門や総務部門長が選任されているケースが多くなっています。

事業者は従事者に指定し、社内に周知しなければなりませんが、この従事者に指定された者が公益通報者の氏名などを漏らす等の本法違反を行うと従事者個人に30万円以下の罰金(刑事罰)が科される等のリスクが発生します。

そのため従事者の選定、教育、罰則がある旨の説明及び業務の負担(リスクを負っていることも含め)軽減のための措置についても十分に検討する必要があります。

②外部に窓口に運用を委託する。

外部通報窓口としては、内部通報窓口を専門とする企業や顧問弁護士や顧問社労士等の外部機関に委託することができ、その担当者を「従事者」として指定することが可能です。

周知の方法等および運用方法にもよりますが、前述の「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」や「ハラスメント防止相談窓口」も兼ねた窓口を外部通報窓口することが

可能であるため、利用している企業も多くあります。外部機関に委託することで、独立性の確保や公益通報をした人を特定できる情報の流失等を防ぐことができ、労働者も相談しやすいというメリットがあります。

対応が難しい場合、窓口業務のアウトソース化をご検討ください。

窓口対応には、各法律の制度趣旨、義務、違反事項等を理解した上で進める必要があります。また、情報の取り扱いも慎重に行う必要があるため、単に設置すればよいという者で

もありません。適切に運用できれば、企業のガバナンス強化や従業員にとって働きやすい環境づくりの一助となり得る制度となっております。

専門的な知識を持ったスペシャリストと並走することで、制度が形骸化せず、法趣旨に沿った有意義な制度することが可能となります。弁護士、社会保険労務士等の士業や窓口対

応を専門としている企業もございますので、是非ご検討ください。

執筆者

社会保険労務士法人ユナイテッドグローバル 

代表 社会保険労務士 川合 勇次

大手自動車部品メーカーや東証プライム上場食品メーカーで人事・労務部門を経験後、京都府で社会保険労務士法人代表を勤める。企業人事時代は衛生管理者として安全衛生委員会業務にも従事し、その経験を活かして安全衛生コンサルティングサービスも展開。

単なる労務業務のアウトソースだけでなく、RPAやシステム活用することで、各企業の労務業務の作業工数を下げつつ「漏れなく」「ミスなく」「適法に」できる仕組作りを行い、工数削減で生まれた時間を活用した人材開発、要員計画などの戦略人事などを行う一貫した人事コンサルティングを得意としている。

※本記事はあくまで当職の意見にすぎず、行政機関または司法の見解と異なる場合があり得ます。
また誤記・漏れ・ミス等あり得ますので、改正法、現行法やガイドライン原典に必ず当たるようお願いします。

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